Low Kick - 2nd -

たぶん全部ひとりごと。 テキトーだけどマジメです。

「永遠の命」は幸せか?

真理を追求したいとか、本質を知りたいとかゴチャゴチャ言っている私を見て、
「いつからそうなったの?」と聞く人がいた。
「原体験があるはず」という。
原体験というのは、デジタル大辞林によると、以下のとおり。

その人の思想が固まる前の経験で、以後の思想形成に大きな影響を与えたもの。

子どもの頃から本が好きで、ストーリーではなくてその中で語られる本質的なものに興味があった。
だから、積み重ねじゃないかな? って思った。
「いやいや、もっと小さな頃は、楽しいから読んでたんじゃない?」

ああそういえば。
本屋で勝手気ままに選んでいるばかりだったけど、ある年、課題図書か推薦図書を読んでみた。
そしたらすごくよくて、大人が推薦するものだって、なかなかいいじゃない! 見直した! ってことがあった。
その時からたぶん、読書がただ楽しいだけのものじゃなくなった。

それは「時をさまようタック」という本。
設定は覚えていた。
永遠の命を手に入れてしまった家族が、それをひた隠しにして生きている物語。
家族はばれないようにするのに必死で、幸せそうではなかった気がする。

実は1年くらい前だろうか。また読もうと買ったまま、本棚にしまってあった。
本棚から出してきて、すぐ読んだ。
(以下ネタバレ)

設定は、覚えていたとおりだった。
永遠に生き続けなくてはならない家族の物語。

彼らはある場所の泉の水を飲んで、意図せず永遠の命(不死身の体)を手に入れてしまう。

家族は、まったく年をとらないことから、結婚相手や近所の人たちに気味悪がれ、
人里離れた場所に引っ越しひっそりと暮らしていた。
そこに、普通の少女が登場した。(私は全然覚えていなかった)
普通に死ぬことができる少女は、彼らの秘密を知ってしまう。

家族が、自分たちは永遠に生きなくてはならないと知った時の気持ち。
地球上のすべてのものが変化し続けるのに、自分たちがそこから取りこぼされてしまったという思い。
少女が、彼らのことを決して誰にも話さないと決めた時の気持ち。

子どもの頃読んだ時の感じを思い出したわけではないだろうけど、私の心に容赦なくストレートに入り込んできた。

少女は、その泉のすぐ側に住んでいながら、
結局泉の水を飲まずに人生をまっとうした。
その間にどんな思いがあったのかは書かれていない。
想像を絶するほど考えに考え抜いたに違いない。

永遠の命なんて、まったく幸せなんかではないこと。
少女にもし、ほんの一回の気の迷いがあったら、彼女は死ねない体になってしまうこと。
それはもう取り返しがつかなくて、だから何が何でも大切なものを見間違ってはいけないってこと。

そんなことが原体験になっていたのでしょうか。