Low Kick - 2nd -

たぶん全部ひとりごと。 テキトーだけどマジメです。

精製によって損なわれるもの

白砂糖が体に悪いとか、食塩より岩塩の方がおいしいとか言わるけど、白砂糖も食塩も「精製」されたもの。

Wikipediaによると、「精製」は、

混合物を純物質にする工程、あるいはその技術。
と書かれている。
旨み調味料(味の素)は、今調べたら「グルタミン酸ナトリウム」で、これもやっぱり旨み成分だけを抽出した(つまり精製した)ものなんだと思う。

昔ダイエットにハマっていたときに、栄養学的なものまで手を出し始め、「精製されたものはよくない」と本で読んだ。
世の中的にも、白砂糖や食塩や味の素はあまり好かれていない。レストランで味の素が使われていたら嫌だし、スイーツには白砂糖より「てんさい糖」や「黒砂糖」が使われてるとなんだかよさそうだし、ランチプレートに色の付いた岩塩が添えられていたらおしゃれ。
でも精製されたものって、他に変な味がしないから、思った通りに甘くなりしょっぱくなり旨みが増す。

その「精製」をね、いろいろなことに感じるんです。

例えば音楽。
Apple Musicは、自分の好みを登録すると、それに合った曲をおすすめしてくれる。精度(精製度)はまだまだだけど、それが高まったら、自分の好みにぴったり合う音楽を世界中から探してくれるかもしれない。
でもそれって、ときにつまんなくないですか?
私はラジオを聞いていて、毎日何十という音楽を聴いているわけだけど、ときどき、ほんとうにたまに、「この曲好きだな!」って思うことがある。Shazamで曲名とアーティスト名を調べて、あとで聴いて、やっぱり欲しいと思ったら購入する。
今までにない感じの曲もある。そういうのって、精製されていない、純度の高くない情報だから得られると思うのです。

あとはデジタル。
思った通りの機能を入れられるんだけど(たぶん)、不要なものがない分、発見や出会いもないというか。
例えばそうね、文字を書くという意味では、メモアプリも物理的なメモ帳も同じなのだけど、メモ帳は絵を描くのも簡単だし、その場で破いて人にあげることもできる。
「ふーん、そういうニーズがあるならデジタルでも実装できるよ」
って、作る人は思うんだろうけど、それはやっぱり人が考えた範囲でしかできない。
例えばメモ帳が、公衆トイレでトイレットペーパーがなかったときの助けになるかもしれないじゃない? それはちょっと極端だけど。

ニュースサービスのGunosyもそう。
私も使ってるけど、人気の出た記事だけ読みたい、というニーズ。
出会いがないし、自分なりの発見もない。

ラジオもメモ帳も、はたまたてんさい糖も岩塩も、結局は人が作ったんだけど、余計なものがたくさん入っていて、純度が低い。ノイズが多い。
そこに、栄養があったり香りがあったり発見があったり出会いがあったりもろもろ。

で、もっと大事な何かも含まれているのだと思うのです。精製すると、なくなってしまうかもしれない。

絵本や小説などの創作をする人は、よくこういうことを言うのです。
「本当のこと」
「世界の秘密」
「この世の真理」
「その先の何か」
とかね。
共通するのは、それらは実態が掴めないってこと。だから意識してそこだけを取り出すことはできないと思う。つまり精製できない。

そこまで書いていて思ったけど、ビジネス本やノウハウ本って、ストーリーを取っ払ってポイントだけを抽出(精製)したものですね。
でもそこにもノイズが入っているから、大量に読むと何かが生まれたりする。

考え出すと止まらない。
そしていつもまとまらない。

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その後の話

村上春樹さんのエッセイ『職業としての小説家 (Switch library)』を読み始めました。
書店が9割方買い占めたという話題の作品ですが、私は少し待ってAmazonで買いました。書店には頑張ってほしいけれど、インターネットより早く買えるってところが書店の魅力ではないと思うし、ネット書店がライバルなのはいいけれど、読者に不便を強いるのは方向性が違うんじゃないかなあ・・・。というのは余談で。

P22ページから、こんなことが書かれていた。
極端な言い方をするなら、「小説家とは、不必要なことをあえて必要とする人種である」と定義できるかもしれません。
 しかし小説家に言わせれば、そういう不必要なところ、回りくどいところにこそ真実・真理がしっかり潜んでいるのだということになります。
まさに! この話! と思ったので記しておきます。